「Architecture as Ecopolitics――地政学的リアリズムに基づく設計思想の再編」(2026年5月29日から6月7日 於東京藝術大学大学美術館陳列館)に、スケルトンログ構法の全36作品の軌跡とその模型12点を出展しました。
「石油に依存しない木や土などの材料からアプローチする作品を集める」という、ホルムズ海峡封鎖に起因する建築界の危機にあっての時宜を得た企画によって、1991年から22年間積み重ねてきた〔地域の材と地域の技で エコロジーでサステナブルな公共建築の木造化構法の開発と実践 設計:黒川哲郎/構造:浜宇津正(H&A構造研究所) ※1) 〕を広く皆様に知っていただくことが叶い、深い感慨を覚えました。
本展のキュレーター・藤村龍至氏との打ち合わせの際の「構造家・浜宇津正氏※2)の存在なくしてスケルトンログは語れない」との会話の中で、オーガスト・E・コマンダント著(小川英明訳)の『ルイス・カーンとの十八年』(明現社1986年)が話題になりました。
「黒川哲郎をブリコラージュ」の〔近代からの回航〕で、黒川は、本書と『薔薇と幾何学』の2冊を取り上げ、
「『ルイス・カーンとの十八年』では、カーンとコマンダント、つまり建築家と構造家が、互いに葛藤しつつ、かつ一体となった建築創造の苦闘が、実に身近で生々しいものに感じられた。と同時に16年前『リチャーズ医学研究所』や『ソーク生物学研究所』を見た時の感激を新たにした。・・・・。
この構造家が、カーンの創ろうとする空間を、その発想の過程からを充分に理解し、把握していたのみならず、迷いなき相談者であり、ときには先導者ですらあったことが、本人の口から赤裸々に語られており、しかも信じがたいほど自己をも客観化したその語り口に、少なからず感動を覚えさせられた。
そして、建築の独自性を支えている構造や構法が、我々の時代において、その表現から曖昧なものに貶められていることを嘆かずにはいられなかった」
と、建築家と構造家、つまり建築の表現とその構造の拮抗の妙の重要性を述べています。
黒川哲郎は、2011年に東京藝術大学を退任し、1年かけて『建築のミッション――スケルトンドミノとスケルトンログは林業と建築を結ぶ』を上梓し、その1年後に帰らぬ人となりました。もし存命であれば、『浜宇津正との38年』※3)を著して、スケルトンログ構法の36作品の創造過程の難渋を、浜宇津氏と共に如何に解決していったかを語ってほしかったと思うことしきりです。
今回の展示「ビブリオグラフィ」の浜宇津氏と黒川の対談:
「木構法の可能性を追求する」(住宅建築1997年4月号)
「木がもつ本来の性質を汲みとって丸太のまま使うスケルトンログ」(住宅建築2000年11月号)
「技術と技能が拓く地域材活用」(住宅建築2003年8月号)
そして『建築のミッション』の黒川の文言の中から、スケルトンログ構法における浜宇津氏とのやりとりを想像していただければと思っています。
※1)2004年 日本建築学会〔業績〕賞
※2)『郡上八幡総合スポーツセンター』で第13回松井源吾賞
※3)初めてのパートナーシップは1974年のRC造『黒田アトリエ』(都市住宅第8集)
コメント