ハイテクノロジーとハイテクニックの習合

ハイテクノロジーとハイテクニックの習合

ハイテクノロジーとハイテクニックの習合

「公共建築」2000年1月号「わたしが歩んだ道」で、黒川哲郎は、
「1992年の「上野警察署動物園前交番」は、私の最初の公共建築です。上野の杜をシンボル化したアルミのオブジェの印象が強いのですが、建物本体はプレハブ化に優れたスチールの、枠組みパネル構法のケーススタディです」と述べています。

竣工した時は、三方が樹木にうっそうと覆われ、建物が埋没しないように「杜のイメージを抽象化したアルミのオブジェに置き換えた」はずでしたが、28年の間に少しづつ樹木が伐られ、今では、まったく四方が開放されています。
先日、袴田喜夫氏より、「設計時、将来四方が開放されることは想定内だったのですか」と尋ねられ、とっさに「想定外のはずです」とお答えしたのですが、改めて図面を見てみると、ほぼ正四角錘ですので、もしかしたら「開放されることは」ともかく、「陰と陽のない建物をつくること」は、織り込み済みだったのかもしれません。
東京都「設計候補者選定委員会」からの指名によるもので、当時、設計者の選定という難しい問題に都が一石を投じたといわれていますが、「アトリエ派の建築家」という言葉もしばしば使われるようになったように思います。

「住宅特集」1992年4月号「表現のディテール」で、「技術と技能の習合」というタイトルの文章を書いています。「上野の杜は、自然と建物が混然と、しかし調和的な関係を保つ都市的な森である。」という書き出しで、「キャノピーは、‥‥、建物本体は、‥‥」とディテール譚が展開されています。そして、「あずま屋ほどのスケールの建築の中に、金属とガラスの様々な技術が、しかしいずれも高度な技能レベルで習合し、人出の多い敷地で、セミプレハブ的に施工された。

それは、イメージと技術(ハイテクノロジー)そして技能(ハイテクニック)が融け合う現代的であり、伝統的ともいえる日本的な建設風景であった。プロセスとしての魅力だけでなく、出来上がったその表情にもテンポラリーであり、同時にコンテンポラリーな日本的な時代感覚を色濃く投影しているように思う」と締めくくっています。

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