今回も、前回、前々回に引き続き、【建築文化1985年4月号】から。
『田中邸』をオリジンとする木構造の三つのテーマから形づくられたスケルトンモノコックのモデル『山本邸』の仕様を、
●「集成材と仕口+金物のコンビネーション
●1.2mをプランニンググリッドとした平側4スパン12m、妻側1スパン4.8mの軸組とパネルによるスケルトンモノコックのペリメータストラクチュア
●コンパクトな切り妻の幾何学的立体」とし、
この仕様を、「フォーミュラーシステムのプロトタイプ」と黒川哲郎は宣言しています。
「西側3.6m・1スパンは半地下から始まり、東側7.2m・2スパンは1階から始まり小屋裏で終わる相互半階ずれたそれぞれ3層の構成、残る中央の1.2m・1スパンは建物の全断面の姿を現す吹き抜けで、その中を次々と方向を変える階段が6枚のスラブを縫い上げながら昇っている。ワンフロアワンファンクションの住まいは、こうして生活の機能の重畳性を獲得し、垂壁やキレットによって分節されながらも空間の重層性を増している。テラスやデッキは内部の生活が湧出したように拡がり,内部の軸組や架構は表出されているが、対照的に外部はガルバリュウムと鋼板とガラスの連続した1枚の被膜によってラッピングされている。スケルトンモノコックの観光バスが、次々に拡がる景色を1枚のパノラマとして獲得し、それと一体になろうとしたように、『山本邸』の内部と外部は互いの対峙的な緊張感を保ちつつ絶えず合一しようと働きかけ合っている。その中で外被は薄く、かろうじて自らの姿を保って存在している。
「この『山本邸』のシステムは、ひとつのフォーミュラーに過ぎず、プランや仕上げは自由、構造や形態の可能性は無限である。
しかし「大きく連続する開口とRCよりスパンしながらメンバーの細い独特の構造のプロポーションが、共通した表情を保ち続けるであろう」と結んでいます。
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