成長する部品

成長する部品

『竹田邸』の改修の3年後に、『住宅特集』の連載「家をつくる図面」の第7回(2016年11月号)の取材を受けました。聞き手は大井隆弘氏で、藤原徹平氏と前島郁雄氏へのインタビューが行われました。

まず藤原氏が、『住宅特集』の連載「建築家自邸からの家学び」の第13回(2013年8月号)の取材時に、黒川から直接『重箱住居』の案内を受け、クリティークをまとめた、との立ち位置を話され、「1979年代後半のいわゆる都市住宅世代の建築家の自邸の流れの中で、黒川さんは1980年代に入るとそれまで注力していたRC造住宅をぱったりやめ、木造の世界へ入る。これだけのものを作れる人がなぜと大変興味をいただきました」と口火を切ります。

続いて、『竹田邸』を担当した前島氏が、工学部の機械科を卒業してから建築科へ入りなおしたこと、藝大建築科の機関誌『空間』4号(1981年)で黒川の論考「部品化木造住宅」「木製サッシ開発と試作」を読んだこと、実家が茅野市で木製サッシの製造をしていること、面接の日に自動車の話で盛り上がったことなど、デザインリーグ入所のいきさつを語ります。ちょうど黒川が「フォーミュラーハウス」を志向し、試行していた時期で絶妙な存在だったといえるでしょう。

そして大井氏は、「ペリメータストラクチュア」が、初期のRC造作品やその後の木造作品に共通していることに言及します。

藤原氏から、外周部に構造を集約すると在来工法では外周部が筋交いだらけになり、貫に代えても平面や立面の自由が得られないことから、「38条の一般認定を取っていた1方向はラーメンかアーチ、他方向筋交いかブレース」を援用したことなど、黒川の設計の道程の説明があり、

前島氏は、「自動車の組み立てのように、シャーシにボディを溶接して一体のスケルトンとし、表面のパネルは力を受けず、簡単に交換できる、そんなイメージで住宅の新たな規格を考えたいと「フォーミュラーハウス」と命名したのでは」と述べ、「民家の差し鴨居からヒントを得て、半剛接の仕口で構造をまとめている」と、後に「スケルトンドミノ」と命名する構法の萌芽を語ります。

そしていよいよ、「なぜRC造から木造に?」の本題が語られます。

前島氏は、黒川が『甲斐邸』の解説文に「そのグリッドが、「座標」であるより先に「建築」としての存在を強く主張している」と記したのに着目し、「木造が内包する「座標」に強く惹かれていたのでは」と述べます。

藤原氏は、「「グリッド」ではなく「座標」という言葉を使ったことが重要‥‥大工が減り、輸入材にとって代わられている。‥‥木造そのものの考え方をはっきりさせるべき時期だったのかもしれません。‥‥現在の在来工法のみで林業や人の命を守り切れるのか。黒川さんには木造への興味だけでなく、建築家としての使命感もあったのでは」と述べます。そこで

大井氏が、「木造の軸組は構造であると同時に部品の受け手であり、座標であるといわなければいけない」という黒川の『部品と座標』という論考を紹介し、「部品の受け手というあたりは、鉄やコンクリートよりも木に分を認めている。この「座漂」という考えにRC造から木造への変換の理由があったのでは」として、「黒川さんの建築を知るヒントになると思います」と、1981年から82年に『建築知識』に18回にわたって連載した『新部品考』を提示します。これを受けて

藤原氏は、内田祥哉氏の「ビルディングエレメント論」を連想したとし、

前島氏は、「内研の皆さんが誘ってくれたので集成材や差し鴨居にも出会え、日本住宅木材・技術センターから「木造住宅の合理化」の試作を委託された」と明かします。

藤原氏は、連載第1回の黒川の「これまでの部品は主に構法の枠組みの中で、工業化の手段やディテールの変形としてとらえられてきたが、この連載の部品は空間を語るデザイン論の根底にかかわるものとなる‥‥もともと部分のイメージであったものが姿を変えて、最後に部品という形をとるものに成長していく」という文言を、「初めて聞き、興味深い」とコメントします。

大井氏は、第8回の「露出と隠蔽」の「‥‥アッセンブルのためのお粗末な部品は耐えられない」との黒川の文言を提示して、「強烈ですね。そうした部品の『露出』はデザイン上許し難い。かといってブラックボックスに『隠蔽』するのはメンテナンス上抵抗がある。部品開発をしていてはコストが合わない場合、最終的に『半露出』とする事例を紹介しています」と提起します。

前島氏は、「住宅全体のデザインをこうした部品化が支えている」として、『竹田邸』の門柱など、実際の「半露出」を説明します。そして「作り手側が作り方を正しく理解するために描いたもの」と、構造設計の濱宇津正氏とのやりとりの図面を紹介し、「‥‥こういった構法も含めて設計していくとその部分が部品と呼べるものになるのかもしれません」と結びます。それを受けて、

大井氏が「1方向ラーメンで自由になった平側の窓やドアのディテール」について質問し、
「フレームレスのガラスドア」「すべり出し窓」「木製引き戸」の収まりを具に見ながらのビビッドな会話は、尽きることを知りません。そして、

前島氏のガラスブロック壁の積み方の苦心譚に、

藤原氏は、「ガラスブロック自体は部品ですが、積み上げられた面全体も部品に成長したということを感じます」と呼応します。

最後に、大井氏から家具の図面をみながらの質問があり、

前島氏は、「住宅にどんなモノがどれくらいあるかを調べました。工場で組み立てて運ぶハコ式か、現場で組み立てるパネル式かといった運送コスト、床の不陸にも対応できるようなジョイントの仕組みまで考えています」と答えます。

藤原氏は、「面白いのは、建築サイドの壁やドアもユニット化の対象に含まれていて、個室は勿論トイレさえも家具で間仕切りができる。内部に構造壁を持たない『フォーミュラーハウス』の考え方が、家具側から提案されていますね」

と、竣工26年後に改修なった『竹田邸』での鼎談は締めくくられました。

『新部品考』については次回に。

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